ITサービスベンダーが「デザイン思考」を使うとき

DesignThinkingWorkshop_1

「デザイン思考」が、巷で流行っているようです。関連書籍も多く出版され、解説動画も多数アップされています。

DXCテクノロジー・ジャパンでも、もちろん力を入れています。既にお客さま向けにワークショップを実施している海外メンバーを日本に呼び、ファシリテーターを育てています。

「デザイン思考」が取り上げられるときには「ゼロからイチを生み出す」「馬ではなく自動車を発想する」「イノベーション」といった枕詞が使われることが多いようです。新しいサービスや商品の企画に役立ちます!という触れ込みです。一方で、「デザイン思考」を使って発想したITサービスは、これまでと何が違うのか?という声も耳にします。

エクストリームユーザー(極端な使い方をする利用者)の観察、ペルソナの設定、カスタマージャーニーマップなど、色々な道具が「デザイン思考」の中で紹介されています。新たなモバイルアプリやECサイトの開発といった「多数の消費者向けのサービス」のための発想には、比較的すわりのよさそうな方法です。一方、それ以外のITサービス向けに「デザイン思考」を適用しようとすると、難しさを感じられる方が多いように見受けます。

私は「何でもデザイン思考が解決法だ!」的な信者ではありません。問題を解決できそうな一番良い方法を、場合に応じて採用すればよい、と考えています。ただし「デザイン思考」には、広く普遍的に通じる思想が、少なくとも二点ある(もしくは再提唱している)とも感じています。(そこが、現在あまねく人気を得ている理由かもしれません。)この点を踏まえると、どのようなITサービスに対してもデザイン思考的アプローチができるように感じます。

その1:「人・利用者中心に考えること」

「デザイン思考」では、何度も何度も繰り返されて主張されている点です。当然、といえばそれまでですが、利用者を観察しよう、利用者の立場になって考えよう、利用者の気持ちを想像しよう、という真っ当で健全な主張は、複雑化する社会や経済の中で、重要な警鐘であるとも感じます。

ついつい、我々は目の前の手に入れやすい要件や要望を選択しがちです。しかし、ちょっと待って!それは、本当にそれは利用者の役に立つのか?利用者がうれしいのか?どのようにうれしいのか?まずは、徹底的に観察を!そして、事実から隠された洞察を!と「デザイン思考」は提起していると考えます。

若干話題がそれますが、「利用者、人中心」思想を考えると「デザイン思考」のバイブルともいえるTim Brown氏の本”Change By Design” (邦題: 「デザイン思考が世界を変える」)における”Desirability” の訳=「有効性」には、ちょっと違和感を感じています。「魅力性」と訳している向きもあるようです。「有効性」「魅力度」というよりは「欲しい度」といったニュアンスではないでしょうか。柔らかい訳ですが。

 

その2:「チームで考えること」

こちらは、必ずしも気づかない向きもあるのでないか、と想像します。おそらく、優れたデザイナーやエンジニアの方は、言うまでも無く、個人で「デザイン思考」的アプローチをしているのだと思います。私もそういうお客さまを実際に見ましたし、天才デザイナー達の自伝などにも枚挙に暇がありません。

しかし、デザインするモノ(商品)・コト(サービス)が大規模で複雑化する現代では、個人で全てをカバーすることは極めて困難となっています。チームで取り組むことが必要となったわけです。

チームで創造的なデザインに取り組むとなると、個人での取り組み方とは、少し話が変わってきます。一人の個人としての天才ではなく、組織力が試されるわけです。個人の感性や想像力(だけ)ではなく、チームメンバーが刺激しあってチームとしての結果を出すことが求められます。そのためには、暗黙的な(自分さえわかっていれば良い個人の)才能ではなく、チームメンバーが互いに理解するための共通言語・プロトコルが必要になります。「デザイン思考」が多くの道具をフレームワークとして紹介しているのは、このためだと私は考えています。

若干乱暴かもしれませんが、「人・利用者中心に考え」かつ「チームで考え」ていれば、デザイン思考的アプローチになっているように私は思います。また、それをデザイン思考と呼ぼうが呼ぶまいが、真っ当なアプローチであるようにも思います。

私は、大学の博士論文の研究テーマとして、設計過程の認知学的シミュレーションを取り扱いました。同じ研究室にいた後輩が、設計行為の観察をする「設計実験」から設計者の内的モデルを考案し、私はそれを機械学習を用いた計算機シミュレーションで評価する、という研究をしました。1995年-2000年頃の話です。今考えると、これって「観察して、ペルソナ作って、一般化して、アプリ作って…」デザイン思考だよなぁ、と遠い目になったりしています。(利用者は、研究主体としての「私」でしたが(笑))

そんな20年前の経験を踏まえると、「デザイン思考」は、古くて新しい、そして今後も決して無駄にはならない考え方のように感じます。

キャッチーな名前が災いして、やや軽い?印象も出てきてしまっている感もありますが、大事な考え方として広く知れ渡ることは好ましいと思います。

より多くの利用者により多くの便益をもたらすITサービスを提供するために、我々DXCテクノロジーも貢献していきたい、と考えています。

 


吉見 隆洋(Yoshimi, Takahiro)

製造業向けサービスを中心に15年以上従事し、情報活用エバンジェリストなどに活動を拡大。新生DXCにてChief Techinologist for Japanに就任。東京大学大学院 工学系研究科 博士課程修了。博士(工学)

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