2019/04/20
by 吉見 隆洋
製造業界向け屈指の展示会「ハノーファーメッセ」
2019年4月1日から4月5日まで、製造業における世界最大の展示会(トレード・ショー)の一つ、ハノーファーメッセ(Hannover Messe Industrie: HMI)がドイツ、ニーダーザクセン州の州都ハノーファー(ドイツ語発音。英語ではハノーヴァー)にて今年も開催されました。ドイツの国策INDUSTRIE 4.0に沿った成果をお披露目する位置づけとなっており、各社の動向を集中して効率的に知ることができます。
主催社サイトによると、世界75カ国から6,500社が出展し、5日間の来場者数は215,000人(このうち4割近くがドイツ外からの来場者)と報告されています。年明けに話題になったラスベガスでのConsumer Electronics Show (CES) 2019の、出展社4,400社、来場者数18万人を上回る、かなりの規模の大きさといえるのではないでしょうか。4月初旬は、日本企業にはやや参加しにくい日程ですが、ちらほら日本人の姿も見かけました。
総面積100万㎡の広い会場は、大きく6つのゾーンに
「インテグレーテッド オートメーション、モーション&ドライブ」「デジタルファクトリー」「インテグレーテッドエナジー」「インダストリアルサプライ」「リサーチ&テクノロジー」「コムバック(コンプレスドエアー&バキューム)」に分かれています。広大な会場には、構内バスが走り、また、建物ごとにレストランなどもあったりします。
メッセ初日にはメルケル首相も来訪し、ドイツとしての力の入れ具合が感じられます。また、SAPやSIEMENSは、さすがお膝元のドイツでの展示会ということもあり、他にも増して巨大なブースでした。ざっと見て歩いたところ、盛り上がって多くの人が始終行き来していたのは、「インテグレーテッドオートメーション」と「デジタルファクトリー」エリアだったように思います。
さて、DXCテクノロジーブースでは?
DXCテクノロジーのブースは、主たる IT ベンダーが居並ぶ「デジタルファクトリー」エリア(ホール6のF16ブース)。
かなりの広さで、力入っています!!!黒を基調としたブースは少ないので、周りからみると目立っていたのではないでしょうか。
欧州の中でも製造業向けサービスに強い、ドイツと英国のメンバーが主に集結し、製造実行システム(MES)や、倉庫管理の自動化、予防保全、ショップフロアの自動化、OTセキュリティ、スマートサプライチェーン、トラック&トレース、AIを用いたRPA、エナジーソリューションなど20のユースケースを紹介しました。
Red Hat Fuse でサービスバスを構築し、4工場の情報を統合管理しているメルセデスのMESの例
コンチネンタル社向けのカスタムMES事例
棚の在庫確認をドローンが行う倉庫管理。自動化やピッキングの改善などの最適化。日本にも上陸したDECATHLON社の事例です。
KINEXON社のセンサータグを利用した位置情報管理。物流のトレースやジオフェンシングに利用できる。ブースでは、DXCメンバーがブースのどこにいるのか、を見えるようにしていました。
深層強化学習を利用したサプライチェーンの最適化。Bosch Rexrothと協業で。
位置決めステージの精度を維持するためのリアルタイム温度監視
ドローンによる広域監視
年初のCES 2019のキーノートでもLGの開発パートナーとして紹介され、その後DXCによる買収が発表されたLuxoft(2019年6月に買収完了)からは、次世代自動車向けを展示していました。
webOSを利用した次世代自動車ユーザーインターフェース(UI)とVR/モーションセンサーを利用した仕掛け
HMI 2019 – 「デジタルファクトリー」エリアの所感
「デジタルファクトリー」エリアの各社ブースを見て、データの収集や見える化、デジタルツインのシナリオが、具体的な活用の段階に入ってきていることを強く感じました。
DXCテクノロジーのブースをはじめ、有望なスタートアップやパートナーと組み、より具体的な取り組みに、すぐに適用できそうなケースの紹介が、大変多く見られました。言い換えれば、他社と協調する領域を明確にしている ー 裏を返せば、他社と競争する領域を明確にしている ー 企業のブースが目立ったともいえます。
私は、ドイツの国策INDUSTRIE 4.0が国力増強のための中小企業施策という見方でいます。プロトコルの標準化による相互接続性の向上やプラットフォームの検証などの取り組みは、そのための手段と思えます。HMI 2019を見て、ドイツ国内の様々な小さな企業がパートナーを得て世界へビジネスを拡大する、という方向性が、いよいよ実り始めているように見えました。
なお、来年の開催は、4月20日から4月25日までとのこと。今年ご足労頂いた方も、残念ながら、の方も、是非来年、ハノーファーメッセのDXCテクノロジーブースへお越しください!(この時期のハノーファーは、ホテルが相当混みあいますので、早めの予約をお勧めします。)