2019/10/02
by 吉見 隆洋
 

もしも、IMDS(International Material Data Systems)と聞いてピンと来たことがあるなら、自動車業界に、精通している方とお見受けいたします。では、この「自動車部品における環境負荷物質情報のデータベース」の開発・運用を、DXCテクノロジーが担っていることもご存じでしたでしょうか?

欧州の自動車メーカー8社(Audi, BMW, Daimler Chrysler, Ford, Opel, Porsche, Volkswagen, Volvo)が中心となって2000年に立ち上がったIMDSは、今をときめくTESLAなどを含め、世界中の自動車メーカーと部品サプライヤー18万社以上(2019年8月末時点)が利用する自動車業界の標準プラットフォームとなっています。

IMDSのきっかけは、欧州における「ELV指令」への対応でした。クルマ1台にどんな材料が何グラム含まれているか、完成車メーカーに報告する義務が課されたのです。部品点数が極めて多い自動車では、完成車の背後に非常に多くのサプライヤーが関わっています。サプライチェーンの川上から川下までの全てのサプライヤーが提供する膨大な部品の環境負荷物質情報は、集めるだけでも途方もない労力がかかり、とても単独の完成車メーカーの手に負えるものではありませんでした。そこで、1998年に欧州の自動車業界が協力してIMDSのプロジェクトをスタートさせました。

もちろん、そこには、IT基盤の開発と運用を担うパートナーが必要でした。特定のハードウェアやソフトウェアに依存しない独立系のシステムベンダーだったこと、自動車業界での実績が非常に豊富だったことから、DXCテクノロジー(当時EDS)がシステムパートナーに選ばれました。

 

IMDSのシステムパートナーとしてのDXCテクノロジー

IMDSは今でいうSaaSの仕組みで、WEBブラウザーからログインするだけで使うことができます。2000年にサービスを開始して以降、登録企業と登録データ数ともに右肩上がりで増加し、規模も年々大きくなっています。近年では、EV/PHV/PHEVなどの拡大で、裾野は益々広がっています。機能も継続的に改善されており、例えば、2019年5月にリリースされたリリース12.0では、前年にリリースの「ケミストリマネージャー機能」を改善し、REACH Annex XIV規制と殺生物性製品規則(BPR)への対応を強化しています。

DXCテクノロジーは、IMDSのアプリケーション開発・改修や運用を全面的に担い続けています。IMDSのサポートデスクを欧州・北米・アジアの3極に設置し、英語、ドイツ語、フランス語、イタリア語、ポルトガル語、日本語、韓国語、中国語でサービスを提供しています。

IMDSは、完成車メーカーと部品を供給するサプライヤー間で、必要な環境負荷物質情報の効率的な登録と管理・共有を支えています。IMDSが業界全体にもたらしたコスト削減効果は計り知れません。一般車だけでなく、商用車、建設機械までをもサポートしています。近年、IMDSのステアリングコミッティは、完成車メーカー間だけでなく、完成車メーカーとサプライヤー間の意見交換の場としてオープンなコミュニケーションを活発化しています。

DXCテクノロジーは、自動車業界だけでなく、製薬、電子マネーなど様々な分野で、業界全体の利益と発展と支えるプラットフォームを、実は皆さんに知られていないところで提供しています。DXCが持つ様々な業界における経験と知識を活かせる、非常にやりがいのある仕事です。

さて、「身近なところにDXC」の第1回、いかがでしたでしょうか。この連載を通して、DXCテクノロジーという会社をちょっとユニークな視点からお届けしていきたいと思っています。どうぞご期待ください。

 

About the author

吉見 隆洋(Takahiro Yoshimi)
DXCテクノロジー・ジャパン CTO。製造業向けサービスならびに情報活用を中心に20年以上IT業界に従事。業務分析の他、各種の講演や教育にも携わる。東京大学大学院 工学系研究科 博士課程修了。博士(工学)、PMP

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