第 2 回【身近なところにDXC】クルマの安全と快適性を支える “制御”の仕組みがピンチ!?

自動車を走らせるためのパワートレインシステムは、エンジン、ミッション、ブレーキ、リチウムイオンバッテリーなどの高度な連携によって成り立っています。これらの制御は「電子制御ユニット(Electronic Control Unit: ECU)」と呼ばれるコンピューターが担っています。そして、その制御プログラムとデータ(=「HEXファイル」と呼ばれます)は、近年ますます大規模化しています。
経済産業省の資料によると、一台のクルマのソース総行数は、2016年に1億行に至っており、戦闘機(2,400万行)や携帯電話のOS(1,200万行)を、遥かに超えてしまっているそうです。2007年には、1,000万行だったそうなので、今後の自動運転や運転支援システムを考えると、電子制御の複雑性は、さらに加速していくことは間違いありません。

というわけで、第2回も自動車業界の話をお届けします。

さて、自動車メーカーでは、複数の車載コンポーネント間の依存性を考慮しながらECUに書き込む「HEXファイル」を組み合わせ、「適合(Calibration)」と呼ばれるチューニングとテストの作業を繰り返し、最終的に完成車に実装します。わずかな不整合が手戻り(再テストやプログラム・パラメーターの修正など)につながるため、クルマ1台分の「HEXファイル」の構成管理とバージョン管理は、非常に重要なテーマとなっています。大規模化するクルマのシステム、増え続けるソースコードやパラメーター、更には、テストを行う人手の不足は、時にはソフトウェア由来のリコールを招きます。いざリコールが発生すると、何よりも重要な安全性に対する信頼を損ない、莫大な対策費用が発生してしまうこともあるため、いまや「HEXファイルマネジメント」は、すべての自動車メーカー共通の課題であり自動車業界全体の課題となっているのです。

そこで、国際標準化団体ASAM(Association for Standardization of Automation and Measuring Systems)が主導して、「自動車ECU開発用HEXファイル管理システム」の標準化が進められることになりました。本田技術研究所、日産自動車、トヨタ自動車、日野自動車がASAMのワーキンググループに参加しており、「HMS(HEX file Management Service)」の国際標準化に向けて議論を重ねています。完成車メーカーの皆さまは、この領域が「非競争領域」であり、標準に基づいた業界としての連携が必須であると考え、2016年にASAMにおける初めての「日本発の」標準作りに着手しました。クルマ1台のすべての制御システムの「HEXファイル」を正しく選択して配布できる枠組みが確立されると、完成車メーカーだけでなく、部品メーカーやエンジニアリングサービス企業まで業界全体がメリットを享受できるようになります。

こうした取り組みとしては、「モデルベース開発(MBD: Model Based Development)」が良く聞かれます。MBDのプロセスで洗練され、残されていく「HEXファイル」は、言ってみれば、「料理の仕方」と必ず作られる「食べ物そのもの」、という関係でしょうか。

DXCテクノロジー・ジャパンは、ASAM の国際標準化に寄与

DXCテクノロジー・ジャパンは、中立的なITベンダーとしてASAMのワーキンググループに参加しており、「ASAM HMS」のコンセプトペーパー策定当初から積極的に取り組んできました。現在、2020年の「HMS標準仕様」策定に向け、HEXデータ管理のためのメタデータの考え方、システム連携インターフェースなど、システム実装を見据えた検討を進めています。手前味噌ですが、この活動のITに関わる仕様検討に関しては、DXCテクノロジー・ジャパンが大きな役割を担ってきたと自負しています。

こうした経験を踏まえ、今年2019年にASAM HMS標準仕様(ベータ版)に準拠した「DXC HEX Management Service(”DXC HMS”)」をリリースしました。日本の大手自動車メーカーの声を積極的かつ大胆に採り入れ、DXCテクノ
ロジー・ジャパン主導で開発したパッケージソフトウェアです。DXC HMSは、大規模な「HEXファイル」の構成管理とバージョン管理を統合的に行えることも、もちろん大きな特長です。

更に、海外ベンダーの海外開発のソフトウェアとは異なり、日本の現場に根ざした要望に迅速に対応できることも、実は、隠れた特長です。標準仕様は日本各社の共通の要望に基づいたASAM HMSに準拠しつつ、各社の「競争領域」となる、データ分析や他システムとの連携が必要であれば、個別に対応できるわけです。

そして、日本の適合現場の状況も踏まえて、ユーザー数によるライセンスだけでなく、「拠点によるライセンス」も作ることができました。これは、良いクルマをつくるために部門や部署を越えて一台分の情報共有が必須だ、という理念に基づいています。

すでにいくつかのお客様で試験運用が始まっており、トレーサビリティや適合作業の効率化における有効性の検証が進められています。3年越しの取り組みが、こうして実を結んだことは、私としても望外の喜びであります。

実は、私たちは種々のモータースポーツをサポートしてきた経験もあります。お客様企業固有のアプリケーション開発に幅広く取り組んでいるだけでなく、自動車業界全体の発展に寄与する様々な活動にも参画しています。DXCの自動車業界における豊富なノウハウを、日本のお客様のビジネスにお役立ていただければ嬉しく思います。

「身近なところにDXC」の第2回、いかがでしたでしょうか。次回も業界視点から、DXCテクノロジーの取り組みにご紹介したいと思っています。どうぞお楽しみに!

 


YoshimiTakahiro

吉見 隆洋(Yoshimi, Takahiro)

製造業向けサービスを中心に15年以上従事し、情報活用エバンジェリストなどに活動を拡大。新生DXCにてChief Techinologist for Japanに就任。東京大学大学院 工学系研究科 博士課程修了。博士(工学)

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