「ソフトウェアファースト化」する自動車開発でデジタル時代を勝ち抜く【前編】 自動運転やコネクテッド技術がもたらす変化

近年、自動車の付加価値の大部分をソフトウェアが担うようになってきています。パワートレインをはじめとする車両システムの高度な連携・統合制御はもちろん、その上に成り立つ自動運転やADAS(Advanced Driver-Assistance Systems/先進運転支援システム)、バッテリー状態、ナビゲーションシステムなどさまざまな情報を集中的に表示する画面、音声による入出力機能など、いずれも高度なソフトウェアが必要です。

これまで、自動車のソフトウェアの書き換えは、不具合が発見された際に修正を加える場合など、ごく限られたケースでした。しかし近年では、ソフトウェアを継続的にアップデートし、機能を改良したり新たな機能を追加するケースが一部のブランド・車種でみられるようになりました。今後は多くの自動車がソフトウェアをアップデートすることで付加価値を高め続けていくことでしょう。

自動車のソフトウェアを継続的にアップデートするためには、外部ネットワークへ接続する「コネクテッド(つながる)」技術や高度なセキュリティ対策が求められます。一方で、4G/5G携帯電話網のデータ通信機能を自動車へ搭載することは、アップデートするソフトウェアの無線による高速なダウンロードだけでなく、ナビ機能の地図更新や運転者/同乗者向け各種サービスを充実させるためにも重要で、さまざまな付加価値にもつながるものです。

例えば、今後は「レベル3(高速道路など一定条件下において全ての運転操作をシステム側が行うものの、緊急時には運転手が運転操作を担う)」以上の自動運転が普及することで、運転者も移動時間を別のことに使えるようになっていきます。コネクテッド技術によるサービス提供は、車内での新しい体験を提案するという観点からも、大きな付加価値になります。

 

柔軟性とスピード、そして品質を担保する継続的な開発手法とは

今後、自動車メーカーは継続的にソフトウェアを開発し続けることが求められるようになります。従来のように、完成したらそこで開発完了、ではなくなります。ソフトウェア開発にまつわる考え方や姿勢を、抜本的に見直す必要があります。

自動車開発というと、ソフトウェアも含めてサプライヤーが開発した部品を一台の車に組み上げ、その車でテストを繰り返すスタイルが現状では一般的です。これまでソフトウェアは、各部品の制御を目的として個別に開発し、部品の一部として完成品が搭載されてきたため、部品ごとに分散されたスタイルで開発できました。しかし、ハードウェアとソフトウェアの開発が複雑に絡み合い不可分になってきている中、柔軟かつスピーディなソフトウェア開発は困難でもあり、開発期間は長期化しています。

一方、IT業界のソフトウェア開発手法はどうなっているでしょうか。IT業界では近年、「アジャイル(俊敏な)開発」と呼ばれる手法が広まっています。アジャイル開発とはソフトウェアを継続的かつ短いスパンで改良・アップデートを繰り返す方法です。

アジャイル開発では、開発チームの負担を軽減しつつ品質も担保できるよう、開発したソフトウェアの機能を評価するテストを自動で行うなどの仕組みを取り入れます。また、PCやサーバ、スマートフォンといった機器では、ハードウェア関連の機能の違いをOSやミドルウェアで吸収し、ほとんどの場合はハードウェアなしでソフトウェアが開発可能です。特定のハードウェア固有の機能に関わるソフトウェアも、エミュレーターを駆使するなどして実機がない状態から開発を始められる手法が確立されています。ハードとソフトを並行して開発していくことで、開発期間の短縮を図れるのです。

 

IT業界の開発手法が自動車業界へのヒントに

IT業界でのソフトウェア開発には、自動車業界にとって参考になる考え方や手法が数多くあります。特に次のようなポイントが、デジタル時代に追随できる自動車開発に求められます。

  • OEM主導のトップダウン開発
    車内でのユーザー体験が重要になってくる中で、完成車メーカー(OEM)は、これまで以上にソフトウェア開発へ深く関与していかなければなりません。個別機能の開発はサプライヤーに委託するとしても、従来のような「すり合わせ型」ではなくなります。車両が提供する利用体験のコンセプトや、それを実現するソフトウェアの仕様、アーキテクチャなどをOEM自身が明確に定義し、トップダウンで開発を主導していく必要があるでしょう。
  • 機能主導型の開発
    開発体制に関しても、現状の部品を軸にした形態から、その部品が発現する機能を軸として編成することになります。そこでは、各機能の開発にアジャイルの手法が参考になります。とはいえ、自動車はIT業界よりハードウェアへの依存度が高く、ハードウェアとソフトウェアを一体で開発しなければならない部分も少なくありません。そこでハードウェアに近い部分では従来型の手法、アプリケーションやヒューマンインタフェースに近い部分はアジャイル手法、という組み合わせが現実的な形態と考えます。
  • データ駆動開発
    ハードウェアと一体に開発しなければならないソフトウェアについては、モデルベース開発が有効です。すでに取り入れている自動車メーカーも多いことと思いますが、モデルの精度を高めるためには、より現実に即したデータが欠かせません。実データを蓄積し、判断・決定に活用する「データ駆動開発」が求められているのです。しかし、試験車両をさまざまな状況下で走行させて取得したデータは、どうしても膨大な量になってしまいます。これを一元的に管理し、サプライヤーも含め世界中の研究開発拠点で活用できるよう、効率的に管理する仕組みを設ける必要があります。

 

DXCテクノロジーが提案する「Software Factoryアプローチ」

こうした抜本的な変革は、多くの自動車メーカーにとって経験がなく、リスクの大きい試みとなります。IT業界の常識を取り入れたソフトウェア開発の変革ですから、優れた技術力を持つITベンダーの協力を得るのが近道だといえるでしょう。そして、支援するITベンダーは自動車業界に精通していることが求められます。

DXCテクノロジーは、中立的な立場で自動車業界に深く関わることのできる数少ないITサービス企業です。すでに欧州を中心とした大手自動車OEMへの協力実績があり、例えばメルセデス・ベンツの「MBUX」などにも、開発協力をしてきました。

DXCテクノロジーでは、豊富なノウハウを基に、自動車のソフトウェアアーキテクチャやソフトウェア開発、ソフトウェアインテグレーションを支援する「Software Factoryアプローチ」を提供しています。自動車のデジタルコックピット化やコネクテッドを実現する数々の基盤技術、モデルベース開発の精度向上に必要な高性能データプラットフォームなど、多様なサービスを提供します。日本の自動車メーカーにおいても当社のサービスを活用し、さらなる飛躍を遂げていただきたいと考えています。

今回の前編ではデジタルシフトに伴い自動車業界に求められるソフトウェア開発の最新トレンドをまとめてみました。次回後編では利用者のユーザー体験やユーザーインターフェースの観点を中心に、自動車のソフトウェア開発に求められる姿を考えてみたいと思います。

 


柳井 貴志(Takashi Yanai)
DXCテクノロジー・ジャパン DXC Luxoft自動車企画室長。
大手自動車会社にてソフトウェアプラットフォーム、MBD・シミュレーション、システム・ソフトウェアアーキテクチャ開発を経験後、DXCテクノロジー・ジャパンにて日本における自動車業界向け事業企画に従事。

 

吉見 隆洋(Takahiro Yoshimi)
DXCテクノロジー・ジャパン CTO。製造業向けサービスならびに情報活用を中心に20年以上IT業界に従事。業務分析の他、各種の講演や教育にも携わる。東京大学大学院 工学系研究科 博士課程修了。博士(工学)、PMP

 

 

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