「ソフトウェアファースト化」する自動車開発でデジタル時代を勝ち抜く【後編】いまや無視できない、自動車ソフトウェアにおける「ユーザー体験」

前編では、デジタル化が加速する今日の自動車業界のソフトウェア開発について紹介しました。今回は「ユーザー体験」の観点から、自動車のソフトウェアのこれからの姿を考えて行きたいと思います。

ユーザーに対する自動車の付加価値を、さまざまな側面からソフトウェアが大きく高めることは間違いありません。特に大きく影響する部分は、デジタル表示画面を中心とした、ユーザーインターフェース(UI)、またそれらを通じたユーザー体験(UX)でしょう。

インストルメントクラスターやセンタークラスター、ヘッドアップディスプレイなどの画面UI、そしてUXをどのようにデザインし、実現・実装すべきなのか―今後の自動車開発において、これらの課題を避けて通ることはできません。

PCやスマートフォンのアプリケーション、Webコンテンツなどの開発でもUI/UXの工夫により商品の魅力を高めようとする取り組みが広く行われています。多くの家電製品においても、UI/UXの重要性が高まってきています。ソフトウェアにより実装される機能が急激に増え、「スマートデバイス化」しつつある自動車も、同じ潮流にあります。

車載デジタル画面のデザインやアニメーション、サウンドや音声入出力の受け答えなど、いずれもがクルマ全体のデザインや機能と密接に関わる重要な要素です。ブランドや車種のコンセプトを体現する総合的なUI/UXデザインが求められます。

例えば、運転者や同乗者が親しみや安らぎを感じる、運転者が車を操る楽しさを感じる、また走行モードに応じて画面をガラッと切り替えて気分も切り替えられる、など、さまざまなコンセプトのデザインが考えられるでしょう。もちろん、コネクテッド技術を通じて車両と連携するモバイルアプリについても、ブランドや車種のコンセプトに沿ったUI/UXデザイン・設計が求められます。

 

自動車の安全性のために、UI/UXに求められること

自動車におけるUI/UXとは、画面だけで完結するものではありません。例えば、ユーザーからの入力だけみても、画面のタッチ操作に加え音声認識、さらにはステアリング周辺からコンソールにかけて配置された各スイッチ類など、多様な手段があります。システム側からの出力も多様で、音声入力に対する音声での応答のほか、通知や警告があれば運転者が気付きやすいようステアリングホイールを振動させるなど、画面以外にも数々のアウトプット手段が用いられます。

こうした多様なインプット・アウトプットを使いつつ、最も重視すべきは、何といっても安全性です。UI/UXでは、運転者に的確かつ分かりやすく情報を伝え、運転者や周囲の安全につながることが、最も重要です。

インストルメントクラスターがデジタル化されたことにより、計器類の情報に加え、ナビゲーションシステムの経路・方向案内、車両センサー情報、ADAS(Advanced Driver-Assistance Systems:先進運転支援システム)/自動運転システムの動作状況など、多くの情報を盛り込むことができるようになりました。ただし、アナログのインストルメントクラスターに比べ、格段に増えた情報量を整理して伝える工夫が必須となります。

画面構成や表示内容のデザインは、情報量の増大によって難しくなります。全ての表示を、インストルメントクラスターの限られた画面に収めることは現実的ではありません。運転者の操作により表示を切り替えることはもちろん、インストルメントクラスターとセンタークラスターの連動、あるいは、横長の大画面により、重要度の低い情報を運転席から遠い側へ移したり、状況に応じてシステムが自動的に表示を切り替えたりするなどの工夫が必要とされます。

安全性という観点では、ソフトウェアの開発・実装においても高い品質が要求されます。自動車の安全性に関しては業界標準に加え、各国/地域の法令でも厳しい規定があるため、それらに準拠することも必要です。こうした要件は、レビューやテストを含む、開発プロジェクト全体のマネジメントにも多大な影響を及ぼします。前編で触れた、IT業界の手法を駆使した柔軟かつ迅速なソフトウェア開発や、高度なプロジェクト運営を求められているといえるでしょう。

 

DXCテクノロジーが提案する「デジタルコックピット」ソリューション

IT業界では、UI/UXのデザイン・設計・開発に役立つさまざまなフレームワークやミドルウェアがあります。その中には自動車業界でも使えるもの、自動車業界向けに手を加えられたものもあります。

UI/UX以外の領域についても、OSやソフトウェア開発プラットフォームなど多種多様なツールが、自動車業界に対応しています。ソフトウェア開発の柔軟性・スピード・品質を改善するには、こうしたツールを最大限に活用することが効果的です。

DXCテクノロジー・ジャパンはグループ会社であるLuxoftと連携しながら、「デジタルコックピット」ソリューションとして、UI/UXのコンセプト作りからデジタルコックピットのPoC、そして量産向けのソフトウェア設計・実装・評価、さらに関連するOSやハードウェア、モバイルやクラウドなども含め、プラットフォーム全体に渡るサポートをご提供しています。欧州を中心とした大手自動車OEMに対する、コンセプトカーから量産車までの幅広い協力実績もあります。日本の自動車メーカーにおいても、次世代の自動車ユーザー体験に向けて、「デジタルコックピット」ソリューションを是非ご活用いただけると幸いです。

 

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柳井 貴志(Takashi Yanai)
DXCテクノロジー・ジャパン DXC Luxoft自動車企画室長。
大手自動車会社にてソフトウェアプラットフォーム、MBD・シミュレーション、システム・ソフトウェアアーキテクチャ開発を経験後、DXCテクノロジー・ジャパンにて日本における自動車業界向け事業企画に従事。

 

吉見 隆洋(Takahiro Yoshimi)
DXCテクノロジー・ジャパン CTO。製造業向けサービスならびに情報活用を中心に20年以上IT業界に従事。業務分析の他、各種の講演や教育にも携わる。東京大学大学院 工学系研究科 博士課程修了。博士(工学)、PMP

 

 

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